歩合制導入が招く治療院崩壊の危険性

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今回はいろんな先生から質問を受ける「歩合制の導入」に関して少しお話していきたいと思います。

あくまでも現時点での僕の考えではありますが「歩合制」は「個人院なら(導入の仕方次第では)アリ」、「分院展開までしている店舗は(よほど慎重にやらなければ)基本ナシ」という形で考えています。

まぁ色々と理由はあったりしますが、スポーツのような「スター選手が生まれることを期待される世界」と違って、そもそもスター選手なんかが居てしまったら、それはそれで逆にチーム全体に取ってマイナスに働きかねないような僕らの業界では、そもそも歩合制自体がそこまでめちゃくちゃマッチするようなものでは無かったりすると考えているんですよね。

また、これがきっかけでチーム内の連携がうまく行きにくくなった・・・というようなケースもこれまでに多々見てきたため、やはり歩合制のリスクは軽視できないなと考えています。

もちろん上手に導入することでスタッフのやる気を引き出すことに成功しているようなケースもあるので、歩合制のすべてを否定することはありませんが、歩合制の導入は本当に慎重に行ってもらいたいとは思っていますね。

では、一体歩合制の導入は治療院の運営にどのような影響を与える可能性が高いのでしょうか?

歩合制導入が招く治療院崩壊の危険性

おそらく「歩合制を導入してみようかなぁ??」と考えている先生の大半は「頑張れば頑張った分だけ給料が上がる歩合制を導入すれば、スタッフ個人個人がもっと一生懸命頑張ってくれるようになるんじゃないだろうか?」という期待があって、導入の検討をしているのだと思います。

確かにそういった側面があることは事実ですが、逆に歩合制を導入することで起きる「マイナスの変化」が軽視されがちになっているんですよね。

では、その起こりやすい「マイナスの変化」がどういったことなのかというと・・・

 

査定に関わること以外のことに対するクオリティが下がる

まずはこれですね。

例えば「新患問診での回数券やプリカの成約」や「EMSの提案(購入)」といったような直接院の売上に関わりそうなポイントっていうのはだいたい歩合制の査定対象になりやすくなってきますね。

確かにこういった部分においては分かりやすくメリットがあるわけですからスタッフも頑張ります。(逆に、目がギラつき過ぎて提案がゴリ押しになり過ぎてしまう・・・なんてケースもあったりするので、ここも一概にメリットだけとは言い切れませんが。汗)

しかし例えば「下駄箱でバラバラになっている靴を整理する」とか「待合室でちょっと待たせすぎている患者さんに一声かける」とか「POP作成への協力」とか、まぁなんでもいいんですけどこういった「査定には一切関係ないようなこと」に意識を傾ける時間がだんだんと減っていってしまったりすることがよくよく見受けられるんですよね。

そのせいで「対応が雑になった・・・」とか「なんだか居心地が悪くなった・・・」といったような顧客対応面での質の低下によるクレームを貰ってしまうケースもあったりします。

評価に繋がりにくいことはやりたがらない・・・というのもある意味人間的な反応ですから、こういった反応も仕方なかったりするのかも知れませんね。汗

 

スタッフ間コミュニケーションがうまく行かなくなる

どのような形での歩合制導入になるかにはよりますが、例えば本院と分院Aの店舗があったとしましょう。

本院は新患さんが多く、毎月50名を超えるような新患さんが訪れていたとしましょう。当然歩合の査定になりそうな機会が多く発生しそうなことも想像がつきますね。

逆に分院Aの店舗のほうでは、毎月の新患さんがだいたい20名~30名くらいで推移していたとしましょう。当然ですが、その分歩合の査定になる機会の発生も減少してしまいますね。(割合自体に関して言えば、各院にいるスタッフさんの人数にも寄るとは思いますが。)

結果、歩合の金額に差が生まれてしまったりもするわけです。

売上が大きいほうがリターンを多く出せるというのは当然と言えば当然なのですが、人の感情はそれで割り切れるというか、素直に納得できるものではなかったりします。

その結果分院Aに属するスタッフが、本院に属するスタッフを妬んだりすることもありますし、逆にそういった環境に置かれていることで一気に投げやりになってモチベーションが低下したり・・・ということが起こったりもします。

こういった「院ごとの差」というのは(ライバル院の有無や立地など)地域などの外的要因にも左右されてしまうため、なかなか均一にすることが難しいです。

これが僕が分院展開までしている院への歩合制導入をオススメできない大きな理由の一つになりますね。汗

 

あるいは、1院の中でも「(予約制などで誰が新患さんに入るか事前に決まっていないような院では)歩合を多くもらいたいから他のスタッフが入る前にササっと新患さんに入る先生」が出てきたりして、他のスタッフに不平不満が溜まったりといったような、「歩合発生機会の奪い合い」によるコミュニケーションエラーが起こったりもしますので、1院だからといって安心できるかと言えば大間違いなんですね!

こういった部分も歩合制導入がキッカケで招いてしまいやすい「行き過ぎた個人主義」による結果だったりするので、注意していかなければなりませんね!

 

歩合制をあくまでもチームとしての成績として捉えられるような仕組みで検討する

とはいえ、分院ごとの地域差と違い、個人院での機会格差などについてはある程度院内の仕組みで対応できたりもするものです。

最初のほうに書いたとおり、まだ1店舗だけの個人院であれば導入の仕方次第では、歩合制においてもある程度メリットのほうを大きくして導入することも可能だとは考えています。

その際に僕がオススメしているのが「査定の基準をチームでの成績」で反映させるようにすることです。

完全に個人成績での歩合を無しにしろっていう訳ではありませんが、一部チーム全体の成績を歩合に反映させるようにするってことですね。

例えば、「1成約ごとに1000円の歩合がつく」とだけ決めるのではなく、「全体としての自費売上が100万円以下なら1成約ごとの歩合は1000円。全体としての自費売上が100万円~150万円なら1成約ごとの歩合は1500円。150万円~200万円なら1成約ごとの歩合は2000円」とかですね。(この辺の数字ごとの設定自体は、その院の売上規模に合わせて調整していかなければなりませんが。)

これはあくまでも分かりやすくするための例ではありますが、要は全員で頑張れば頑張った分だけ、個人のリターンも大きくなるよ、っていうような意識づけを行ってもらいたいわけです。

仮に新患さんが50人以上も来るような院では当然1人のスタッフですべての新患さんを見るわけにもいかず、当然別のスタッフと分担して新患さんを見ていかなくてはならないわけです。(それでも無理やり多く新患さんに入ろうとすることを懸念するなら、ルールで割り振りをあらかじめ決めたりしておけば良いでしょう)

こうなってくると当然自分の頑張りだけでは歩合は最大化しないようになります。

もしその先生がすごく成約率が高いのであれば、他の先生にも成約率を上げてもらえるようにするために、率先して問診の仕方を教育してくれるようになるかも知れませんね。(それが例え最終的に自分の歩合を上げるためであったとしても、チームにとってはプラスです。仮にそもそもそこで他のスタッフへの教育に向かうのではなく、他のスタッフの成約率の低さに当たり散らすような行動を取るのであれば、それはそもそもそんなスタッフを採用してしまった自分の見る目を嘆きましょう。汗)

あくまでも上記の例は1例に過ぎず、別の形でも「チーム全体での成績」を「個人の歩合」にリンクさせるような形にする方法はいろいろとあります。

こういった歩合制での導入であれば「チーム一丸となって頑張る」というチームワーク部分を損ねることなく歩合制によるやる気アップのメリットを享受出来たりもしますので、どうしても歩合制を導入したい先生はこういった発想も検討してみてください^^

 

さらに補足を加えるのであれば、上記のような売上に関わる能力をはかる「定量評価」に加えて、スタッフの人間性などをみる「定性評価」も同時に評価に加えると良いでしょう。

例えば売上とは直接関係なかったとしても「スタッフに対する気遣いがない」とか「遅刻の常習犯」など、仮に数字は出していたとしても人間的にダメな面が目立つスタッフを、数字だけの評価で給料を釣り上げてしまえば、周りのスタッフからしても気持ちの良いものではありませんよね?(ひどくなると、売上さえ作ればあとはどうでもいいのか、と他のスタッフにも思われてしまうかも知れません。)

だからこそ「定量評価」による歩合評価は、大前提として「定性評価」の基準をクリアしているスタッフだけを対象にする、とかですね!

こうすればあくまでもスタッフから信用され、人間的にも評価できるスタッフだけが歩合の恩恵にあずかれるように調整できたりするのです。

この辺りの考えも歩合のデメリットを抑制するような部分になりますので、頭の片隅にでも入れておくと良いかなと思います^^

 

 

まとめ.治療院への歩合制導入は慎重に!

ここまで色々と歩合制について話しましたが、基本的に僕自身は歩合制導入は慎重に!!!派です。笑

やっぱりデメリット自体も少なくありませんからね。

よっぽどうまく導入しないとメリットよりも、デメリットのほうが目立つかな?と思うくらいです。

とはいえ、曲がりなりにも歩合制がうまく機能している院だってあったりしますから全否定まではできませんね。

個人院であれば上記で書いたように、うまく歩合の規定にチームでの連携を組み込むことが出来れば現場を崩すことなく歩合制の導入をしていくことも可能だと思います。

前提として理念などの浸透が十分にされており「歩合がなくたって熱心に頑張る」スタッフが多い院であれば、歩合はさらなるやる気アップの材料として機能したりもしますからね^^(そういう院なら、そもそも歩合が無くてもいいんじゃないの??という話はさておき。)

最終的にはアナタご自身で導入するかどうかの判断を決めるのは間違いありませんが、今回のお話が歩合制導入の検討の際に、何かしらのキッカケになったのであれば幸いです^^

 

 

 

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